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【マーケティング】アドテクの変遷から学ぶべきこと

  • 更新日:2025.06.06
  • 公開日:2025.06.06

Web広告を活用する上で広告の理解を深めることは非常に大切です。単に運用ノウハウを身につけるだけではなく、広告がどのようにして発展してきたのか、その歴史をひも解くことで見えてくる「本質」があります。なぜ今の広告手法が生まれたのか、ユーザーとの関係性がどう変化してきたのかを知ることで、現代のアドテクノロジーをより明確に捉えることができます。

本記事では、アドテクの誕生から現在に至るまでの進化の過程を辿りながら、広告業界にどのような変革をもたらしてきたのかを振り返っていきます。広告の仕組みを深く理解するための第一歩として、アドテクの歴史を学ぶことは大きな意義を持っています。

アドテクとは?

アド(広告) テク(テクノロジー) とは、Advertising Technologyの略称で、広告配信の最適化や効率を上げるためのテクノロジーです。アドテクは、広告主と媒体の双方の広告収益最大化を実現する役割を担っています。

広告主とメディアとユーザーの立場

広告主とメディアの間には、広告に対する目的の違いがあります。広告主は自社商品やサービスの成果を求め、メディアは広告枠の収益性を重視する傾向にあります。この相反する関係を調整する役割を果たすのが、アドテクノロジーです。

広告主側:「できる限りコストを抑え、効率よく配信したい。」
メディア側:「できる限り高い金額で広告枠を買ってもらいたい。」
ユーザー側:「求めている情報を知りたい。」

アドテクノロジーは、広告配信の最適化や効果測定を通じて、広告主とメディアの両者にとって有益な仕組みを実現する役割を担っています。たとえば、ユーザーの興味や行動履歴に応じた広告を自動的に選別し、複数のメディア上に配信することで、広告主は高い広告効果を得られ、メディア側も収益の最大化が可能になります。

このようにアドテクノロジーは、広告主とメディアの間にある目的のズレを埋め、双方にとって持続可能な広告運用を支える重要な技術です。

広告の変遷

アドテクノロジーは、「純広告」から始まり、「アドネットワーク」「アドエクスチェンジ」「DSP」「SSP」「RTB」「DMP」へと段階的に発展してきました。

純広告の登場

アドテクノロジーが普及する以前、インターネット広告の主流は「純広告」と呼ばれるスタイルでした。

純広告とは、広告枠を買い取り、掲載期間を保証する形式の広告です。直接、広告主が各媒体の担当者と広告掲載の交渉を行い、その枠に対して広告を出稿します。この形式をイメージしやすくする例として、オフライン広告の「看板」があります。たとえば、駅前の目立つ場所に設置された大型看板を、企業が半年間契約して自社商品を宣伝するケースです。その看板には契約期間中、常にその企業の広告だけが掲示され、他社の広告と切り替わることはありません。

例:広告枠に3日間1つの広告を掲載し続けることを保証する。

配信システムの高度化

広告配信のシステム化により、ローテーション表示や傾斜配信といった高度な制御が可能になりました。掲載形式も期間保証型に加え、インプレッション保証型クリック保証型など多様化しています。媒体数の増加に伴い、広告主と媒体の手間を省く役割として「メディアレップ」も登場しました。ローテーション表示が可能になったことで、広告枠に複数の広告をローテーションで表示することが可能になっています。

メディアレップとは、Webメディアの広告枠を保有し、広告主・広告代理店に対して広告枠を販売する問屋です。メディアレップは、メディア側の代表として、そのメディアの広告枠や時間を最適な広告主に販売することに特化しています。

例:広告枠に3日間3社の広告をローテーションで表示し、一定の表示回数を保証する。

アドネットワークの登場

広告を出稿する際、かつては媒体ごとに個別に交渉し、掲載枠を購入する「純広告」が主流でした。これは「特定のサイトの特定の枠」を対象とした固定型の広告で、広告主にとっては手間と時間がかかる方法でした。しかし、アドネットワークの登場により、こうした煩雑さは一変しました。

広告主は1つのアドネットワークに広告を入稿するだけで、複数のWebサイトやアプリに同時に広告配信できるようになりました。また、無作為に配信するのではなく、広告主の希望条件に合致する媒体グループに配信できます。例えば、Googleのアドネットワークを例にとれば、GmailやYouTubeを含む自社サービスに加え、200万以上の提携Webサイトやアプリに向けて広告を展開できます。また、広告を最適に配信するため、運用を行う代理店が登場しました。

純広告「特定サイトの特定の枠アドネットワーク「複数サイトの複数の枠

例:スポーツ関連のサイトだけにテニスラケットの広告を出すことができる。

アドエクスチェンジ(広告取引市場)の登場

アドネットワークが急増したことで、複数のネットワーク同士が広告掲載枠を融通し合う仕組み「アドエクスチェンジ」が発達しました。これにより、各アドネットワークは自社だけでは使い切れない広告枠を他のネットワークと共有し、余剰スペースの有効活用が可能となっています。たとえばGoogleの広告システムにおいて、AdSenseはアドネットワーク、Ad Exchangeはアドエクスチェンジに該当します。広告配信の効率化と収益最大化を支える重要な技術基盤といえます。

アドエクスチェンジの登場により、広告取引は「入札型インプレッション課金」へと急速に移行していきました。この方式では、広告主が広告枠ごとにオークション形式でリアルタイムに入札を行い、その瞬間に最も高い金額を提示した広告が表示されます。この仕組みはRTB(Real Time Bidding)と呼ばれ、広告枠の価格は常に変動します。従来のように固定料金で広告を掲載するのではなく、インプレッション単位での効率的な配信が可能となり、広告主側にとっても柔軟で成果に直結しやすい運用が実現されました。

Google AdWords→Google Ads:広告を出したい人向け
Double Click AdExchange→Google Ad Manager
Google AdSense:自分のウェブサイトに広告を掲載して収益を得たい人向け

DSP (Demand-Side-Platform)の登場

DSPとは、広告主側の効果を最大化するためのプラットフォームです。

増えたアドネットワークを一元的に管理し、配信先の選定や入札価格の調整などを最適化することで、広告の費用対効果を高める仕組みです。また、DSPの活用とともに、高度な広告運用を担う専門部門「トレーディング・デスク」が登場しました。

DSPでは、従来の「メディア」中心のターゲティングから進化し、「」そのものにフォーカスしたターゲティングが可能となり、ユーザーの属性や行動に基づいて最適な広告を届けることができます。特に注目されるのが「ダイナミックリターゲティング広告」です。これは、ユーザーの閲覧履歴や購入履歴に基づいて、一人ひとりにパーソナライズされたバナー広告を動的に表示する手法です。代表的なDSPには、FreakOut、Logicad、Criteo、RTBHouseなどがあります。

SSP (Sell-Side-Platform)の登場

SSPとは、媒体側の広告収益を最大化するためのプラットフォームです。

広告主の中で最も収益性が高いものを選択して配信します。具体的には、メディアが持つ広告枠に対し、複数のDSPやアドネットワークからの入札を受け付け、その中で最も高額な入札を選んで広告を配信します。この仕組みにより、同じ広告枠でも常に市場価格で販売されるため、メディアは収益性の高い広告表示が可能になります。

また、SSPは広告の種類や表示回数、ユーザー属性などに基づいて広告枠の配信条件を細かく設定できるため、ユーザー体験を損なわずに広告収益を向上させることができます。

DSPが広告主側の利益を追求するのに対し、SSPはメディア側の収益最適化を担います。このように、RTBを可能にしたのがDSPとSSPです。

RTB (Real-Time-Bidding)の登場

より効率的な広告出稿を実現するために、リアルタイム・ビッディング(RTB)が登場しました。従来の「ジャンル」や「広告枠」ではなく、「ユーザー(オーディエンス)」単位でターゲティングが可能になりました。RTBでは、広告が表示されるたびにオークションが行われ、ユーザーの属性や行動履歴に応じて最適な広告が選ばれます。これにより、広告主はターゲットとするユーザーに対して無駄なく広告を届けることができ、広告効果と費用対効果の大幅な向上が可能となりました。

例:テニス関連のサイトを閲覧した人に対して、テニス以外のサイトを閲覧した際にもテニスラケットの広告を表示することができる。

厳密な技術的・時系列的な整理に従えば、RTB(Real-Time Bidding)はアドエクスチェンジが確立された後に登場し、SSPやDSPの出現を経て初めて実用化されました。

プライベート・エクスチェンジの発達

プライベート・エクスチェンジの発達により、広告主は特定の媒体に限定して広告を配信することが可能になり、より細やかなターゲティングが実現されました。これは、信頼性の高いメディアや限定された広告枠に対して、選ばれた広告主だけが入札できる仕組みで、ブランド毀損のリスクを抑えつつ、高精度なユーザーへのアプローチが可能になります。一般的なオープンなアドエクスチェンジに比べて、透明性や配信品質が重視される場面で多く利用されています。

例:これまではテニス好きの人やテニス関連のサイトにしか広告を出すことできなかったが、テニスラケットを買った人に広告を出せるようになった。

DMP (Data Management Platform)の登場

DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)の登場により、広告配信の精度はさらに高まりました。DMPを提供する事業者は、多様なユーザーデータを保有しており、それをクライアントが自社で保有するユーザーデータと統合することで、より詳細で正確なターゲティングが可能になります。たとえば、Web閲覧履歴や購買履歴、位置情報などを組み合わせて分析し、関心や属性に合った広告を配信することで、広告効果の最適化と無駄の削減が実現されます。広告主はDMPを活用することで、広告戦略をより戦略的かつ柔軟に展開できるようになりました。

まとめ

本記事では、アドテクノロジーの歴史を振り返りながら、インターネット広告市場の全体像を概観しました。その中で、広告取引市場における形態の変化についても説明し、どのような仕組みで取引が進化してきたのかを明らかにしました。さらに、こうした広告取引の中核に対して、機能的に追加され参入してきた各種ソリューションについても紹介しました。

  • 《この記事の執筆》
    白井 俊久
  • 白井 俊久

    株式会社WeBridge
    代表取締役

  • 《この記事の執筆》
    川島 亮太
  • 川島 亮太

    株式会社WeBridge
    WEBマーケティング事業部
    SEOコンサルタント・マーケター

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